ランチア博物館

ランチアデルタS4:Lanica Delta S4

ランチアデルタS4:Lanica Delta S4

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ランチアデルタS4 スペック

  • 最大出力 250PS/6750rpm
  • 最大トルク29.7kgm/4500rpm
  • 車重 1200kg
  • 駆動形式 フルタイム4WD

ランチアデルタS4:Lanica Delta S4

グループBの時代、ミッドシップ・マシンLancia Rally 037でWRCを闘っていたランチア(アバルト)は、熟成を続ける4WDマシンの前には戦闘力が追いつかず、ついに4WDマシンの開発に着手する。

形式名はZLA038ARO。 デルタの名を冠するものの、1985年までのランチア製グループB用ラリー車であった037ラリーや耐久レース・グループ5のベータ・モンテカルロ・ターボが量産車のベータ・モンテカルロのコクピット周りやシャシを流用したのに対して、これは量販車のデルタとはまったくの別物で完全なグループB専用車であった。

ベース車は市販の小型5ドア・セダンLancia Deltaであった。

しかし、ランチアの800番台でも、フィアットの100番台でもない、アバルトの開発コード名SE038として開発されたLancia Delta S4は外見こそDeltaの面影を残すものの、その中身は全くの別物のミッドシップ・フルタイム4WDだった。

このコード名からも、わかるようにラリー専用のレーシングカーであることを示している。

「連続した12ヶ月間で競技用車両も含む200台を生産しなければならない」というグループBの出場資格を得るため、公道走行用車両も販売された。

FRP製のボディの下はクローム・モリブデン鋼管のスペースフレームが組まれ、そのミッドにアバルトが開発したオールアルミ製直列4気筒DOHC16バルブ+アバルト製スーパーチャージャー+KKK製ターボチャージャーという二つの過給機を持つエンジンが搭載された。

エンジンはリアミッドシップに縦置きである。

駆動方式は、1985年当時のグループBで主流となっていたフルタイム4WDを採用。

2,500cc以下のクラスに合わせるため、排気量は係数をかけ1,759ccとなる。

過給機が2つ付いているのは、発進時〜低回転時のトルクを得るためにスーパーチャージャー、4,000rpm以上の高回転時のパワーを得るためにターボを使用するためである。そして、これら2つの過給機を冷却するための二基の巨大なインタークーラがリアに搭載されている。

ランチアデルタS4:Lanica Delta S4 WRCでの活躍

Lancia Delta S4のWRCへの参戦は1985年最終戦のRACラリーで、H. トイボネンとM. アレンが1-2フィニッシュを納めるという形でデビューWINを飾る。

1986年は1月の開幕戦モンテカルロ・ラリーで優勝。 第2戦スウェディッシュ・ラリーでも2位を獲得。

しかし、第3戦でフォードRS200が観客に飛び込むという事故が発生する。ランチアは、この時のオフィシャルの管理体制に抗議してレースをボイコット。

1986年5月の第5戦ツール・ド・コルスで、デルタS4を操るH. トイボネンとS. クレストがコースアウトしてクラッシュ、炎上死するという大惨事が起きた。

以前からワークスチームの大事故が相次いでいた。

グループBでの選手権争いは危険すぎるとして、この事故をきっかけに、ハイスピードのグループBに対するレギュレーションの見直しが行われ、翌1987年からはWRCはグループA車輌で開催されることとなり、Lancia Delta S4の舞台は消滅することとなった。

8月のアルゼンチン・ラリーで優勝。

絶対的な速さよりも、4200kmもの距離を壊れずに走りきることが要求される4月のサファリラリーでは、チームはデルタS4ではなく037ラリーを走らせることもあったが、ランチアはその後も前年チャンピオンのティモ・サロネンや若手ユハ・カンクネンを擁するプジョー・205T16E2と熾烈な争いを展開した。

12月の最終戦オリンパス・ラリーに優勝するも、ランチアが1-2-3フィニッシュし、プジョーが失格となった10月のサンレモ・ラリーが、プジョーの抗議により選手権ポイント対象から除外されてしまい、いったんは決まったマルク・アレンのドライバーズ・タイトルとランチアのマニュファクチャー・タイトルが共に消え、11日間の「幻の王座」となった。

この年でグループBが無くなったため、Lancia Delta S4の活躍はわずか1年という短いものとなった。

前年も入れ13戦中、優勝6回、2位が3回、1986年のシリーズ2位という戦績を残し、WRCから姿を消した。

6勝したものの、デルタS4は「無冠の帝王」と呼ばれ、ランチアのワークス参戦したラリーカーで唯一タイトルの無い車両となった。

無骨なスタイルや歴史からやや暗い影を持つLancia Delta S4だが、そのランチア初の4WDで残した実績が後のLancia Delta HF IntegraleのWRC6連覇につながるのであり、Deltaシリーズ伝説の礎となったモデルと言えるだろう。

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