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ランチアストラトス スペック
ストラトスとはランチアが作ったスポーツカー。世界ラリー選手権(WRC)で勝利することを目的に開発された史上初のパーパスビルドカーである。
元は'70年のトリノショーに出品されたベルトーネのデザイン実験車だったものを、コンセプトごとランチアに買い上げられ、結局二社による共同で開発された。
フェラーリ・ディノやフィアット・ディノに使われたものと基本的に同じ、フェラーリの2418ccのV6エンジンをリアミッドシップにディーノ同様に横置きし、後輪を駆動する。
最高出力/最大トルクとも数値はディーノとほとんど変わらないが、発生回転数をそれぞれ引き下げ、ピックアップを向上して低中速のトルクを重視している。ミッションもクロスレシオ&ローギアード化され、コンペティティブにセッティングされていた。
豪華さが目的ではなく、ウインドウに反射しないようにスエードが多用されたインテリアは、すべてがドライバー優先にレイアウトされ、スイッチ類もシンプルで操作性が追求されている。
ボディはコンパクトだが、左右に余裕があり、高さも180cmの人間がヘルメットをかぶっても支障ないように設計されている。というのも、当時のランチアのエース・ドライバーであるサンドロ・ムナーリの身長が180cmあり、開発当初から彼の意見を取り入れて作られているため。
エンジンは当初フルビアのものが候補だったが、シャーシの方に大きなエンジンを積める余裕があったためフェラーリ・ディノ246GTのを搭載した。
当時の常識では、ラリー競技はあくまで市販車両をレース用に改造して出場するものだった。グループ4も市販車両の競技用特別仕様を想定したものである。しかし、ランチアはグループ4のホモロゲーション取得のための生産義務台数が「連続24ヶ月間に500台」と少ないことを利用し、サーキットを走るような、リアミッドシップにエンジンを積んだレーシングカーをラリーに持ち込んだのである。
ラリーで勝つために生まれたストラトスはFIAの認可をグループ4で取得。
これは生産車ではなく、レースカーとして認可されたのだ。
ただ、グループ4の承認は1974年10月におりたが、審査の時点では規定台数(500台→400台に変わっていた)を製造するための部品がある、または発注済みである、というレベルでしかなく、規定台数には程遠く、プロトタイプや競技用車両すら台数に含まれており、実際に規定台数が製造できたのは80年代に入ってからと噂される。
このような生産台数に関する疑わしさは、グループB時代のラリー037やデルタS4においてもつきまとった。
『連続する12ヶ月に500台生産』というホモロゲーションを背負って1974年2月に市販を開始したストラトスは、同年10月1日に晴れてFIA(国際自動車連盟)から交付を受ける。
世界ラリー選手権での初勝利は、グループ4ホモロゲーション取得直後の地元イベント、1974年サンレモ・ラリー。
翌1975年にはモンテカルロの優勝で勢い付き、スウェディシュ、サンレモを勝ち取る。さらには回りの声をよそにサファリで2・3位を獲得、マルボロからアリタリアにスポンサーも替わり、この年のWRCも優勝、V2を飾る。
1976年には遂に史上初のWRC、V3を達成。
最後の優勝はフランスのプライベートチーム、シャルドネによる、1981年ツール・ド・コルス。
ランチアはストラトスその他で1974、1975、1976年の世界ラリー選手権製造者部門のタイトルを獲得した。(1974年はフルビアやベータ・クーペでのポイントを含んだ結果)
しかし、親会社フィアット・グループの販売戦略に合わせて、その翌年からはフィアット131 ラリーでの参戦に方針転換、ワークス・ストラトスは退役を余儀なくされた。
生産はホモロゲーション用に400台だけ行なわれ、'74年頃にベルトーネ・グ ルリアスコ工場でアッセンブルされたが、'78年頃まで各地のランチア・ディーラーに売れ残った新車がちらほら放置されていたという。
ランチアストラトス スペック
ホイールベースとは前後輪の距離、トレッドとは左右輪の距離の事である。通常、ホイールベースが長いほど直進安定性が良いとされている。
ストラトスのリヤのトレッドは日産・スカイラインGT-Rに近い数値なのに対してホイールベースは現在販売されている軽自動車のホイールベースよりも短い。
実際の寸法は1400mmほどという5ナンバーサイズの車と同様なのに対し、ホイールベースが2180mmと今の軽自動車よりも小さい。
ちなみに代表的な軽自動車のサイズをあげてみると、スズキアルト2360mm、ダイハツムーブ2390mmです。
これは「前後に短く左右に広い」ということであるが、つまるところストラトスは直進安定性が極端に悪いことを意味している。ハンドリングは繊細で、ドリフトを安定させるのが難しかったそうだ。
しかし、その不安定さはミッドシップのエンジンレイアウトの効果もあり、抜群の回頭性を生んだ。その回頭性によって得たコーナーリングスピードはライバルを圧倒し、ストラトスを優勝へと導き、伝説級の車へと押し上げたのである。その人気は現在でもストラトスを第一級のコレクターズアイテムとして存在させている。
直線を捨て、コーナーに全てを捧げた車。それがストラトスという車である。
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